7.4 テンプレートの処理
テンプレートとは何か
おそらくあなたはMVCのデザインパターンについて聞いたことがあると思います。Modelはデータを処理を、Viewは表示結果を、Controllerはユーザのリクエストの制御を行います。Viewレイヤーの処理では、多くの動的な言語ではどれも静的なHTMLの中に動的言語が生成したデータを挿入します。例えばJSPでは<%=....=%>
を挿入することで、PHPでは<?php.....?>
を挿入することで実現します。
下の図でテンプレートのメカニズムについてご紹介します
図7.1 テンプレートのメカニズム図
Webアプリケーションがクライアントに返すフィードバックの情報の中の大部分の内容は静的で不変です。また少ない部分でユーザのリクエストによって動的に生成されるものがあります。例えばユーザのアクセスログリストを表示したい場合、ユーザ間ではログデータが異なるのみで、リストのスタイルは固定です。この時テンプレートを用いることで多くの静的なコードを使いまわすことができます。
Goのテンプレートの使用
Go言語では、template
パッケージを使用してテンプレートの処理を行います。Parse
、ParseFile
、Execute
といった方法を使ってファイルや文字列からテンプレートをロードします。その後植えの図で示したテンプレートのmerge操作のようなものを実行します。下の例をご覧ください:
func handler(w http.ResponseWriter, r *http.Request) {
t := template.New("some template") //テンプレートを新規に作成する。
t, _ = t.ParseFiles("tmpl/welcome.html", nil) //テンプレートファイルを解析
user := GetUser() //現在のユーザの情報を取得する。
t.Execute(w, user) //テンプレートのmerger操作を実行する。
}
上の例で、Go言語のテンプレート操作は非常に簡単で便利だとおわかりいただけるかと思います。その他の言語のテンプレート処理に似ていて、まずデータを取得した後データを適用します。
デモとテストコードの簡便のため、以降の例では以下の形式のコードを採用します。
- ParseFilesの代わりにParseを使用します。Parseは直接文字列をテストでき、外部のファイルを必要としないためです。
- handlerを使ってデモコードを書くことはせず、それぞれひとつのmainをテストします。便利なテストです。
http.ResponseWriter
の代わりにos.Stdout
を使用します。os.Stdout
はio.Writer
インターフェースを実装しているからです。
どのようにしてテンプレートの中にデータを挿入するのか?
上においてどのように解析とテンプレートの適用するかデモを行いました。以降ではさらに詳しくどのようにデータを適用していくのか理解していきましょう。テンプレートはすべてGoのオブジェクト上で適用されます。Goオブジェクトのフィールドはどのようにしてテンプレートの中に挿入されるのでしょうか?
フィールドの操作
Go言語のテンプレートは{{}}
を通して適用時に置換する必要のあるフィールドを含めます。{{.}}
は現在のオブジェクトを示しています。これはJavaやC++の中のthisに似たものです。もし現在のオブジェクトのフィールドにアクセスしたい場合は{{.FieldName}}
というようにします。ただし注意してください:このフィールドは必ずエクスポートされたものとなります(頭文字が大文字になります)、さもなければ適用時にエラーを発生させます。下の例をご覧ください:
package main
import (
"html/template"
"os"
)
type Person struct {
UserName string
}
func main() {
t := template.New("fieldname example")
t, _ = t.Parse("hello {{.UserName}}!")
p := Person{UserName: "Astaxie"}
t.Execute(os.Stdout, p)
}
上のコードでは正しくhello Astaxie
と出力されます。しかしもしコードに修正を加え、テンプレートにエクスポートされていないフィールドを含むと、エラーを発生させます。
type Person struct {
UserName string
email string //エクスポートされていないフィールド、頭文字が小文字です。
}
t, _ = t.Parse("hello {{.UserName}}! {{.email}}")
上のコードはエラーを発生させます。なぜならエクスポートされていないフィールドをコールしたためです。しかしもし存在しないフィールドをコールした場合はエラーを発生させず、空文字列を出力します。
テンプレートで{{.}}
を出力すると、一般的には文字列オブジェクトに対して適用されます。デフォルトでfmtパッケージがコールされ文字列の内容が出力されます。
ネストしたフィールドの内容の出力
上の例でどのようにひとつのオブジェクトのフィールドを出力するか示しました。もしフィールドの中にまたオブジェクトがある場合は、どのようにループしてこれらの内容を出力するのでしょうか?ここでは{{with ...}}...{{end}}
と{{range ...}}{{end}}
によってデータを出力することができます。
- {{range}} はGo言語の中のrangeに似ています。ループしてデータを操作します
- {{with}}操作は現在のオブジェクトの値を指します。コンテキストの概念に似ています。
詳細な使用方法は以下の例をご覧ください:
package main
import (
"html/template"
"os"
)
type Friend struct {
Fname string
}
type Person struct {
UserName string
Emails []string
Friends []*Friend
}
func main() {
f1 := Friend{Fname: "minux.ma"}
f2 := Friend{Fname: "xushiwei"}
t := template.New("fieldname example")
t, _ = t.Parse(`hello {{.UserName}}!
{{range .Emails}}
an email {{.}}
{{end}}
{{with .Friends}}
{{range .}}
my friend name is {{.Fname}}
{{end}}
{{end}}
`)
p := Person{UserName: "Astaxie",
Emails: []string{"[email protected]", "[email protected]"},
Friends: []*Friend{&f1, &f2}}
t.Execute(os.Stdout, p)
}
条件分岐
Goテンプレートにおいてもし条件判断が必要となった場合は、Go言語のif-else
文に似た方法を使用することで処理することができます。もしpipelineが空であれば、ifはデフォルトでfalseだと考えます。下の例でどのようにif-else
文を使用するか示します:
package main
import (
"os"
"text/template"
)
func main() {
tEmpty := template.New("template test")
tEmpty = template.Must(tEmpty.Parse("空の pipeline if demo: {{if ``}} 出力されません。 {{end}}\n"))
tEmpty.Execute(os.Stdout, nil)
tWithValue := template.New("template test")
tWithValue = template.Must(tWithValue.Parse("空ではない pipeline if demo: {{if `anything`}} コンテンツがあります。出力します。 {{end}}\n"))
tWithValue.Execute(os.Stdout, nil)
tIfElse := template.New("template test")
tIfElse = template.Must(tIfElse.Parse("if-else demo: {{if `anything`}} if部分 {{else}} else部分.{{end}}\n"))
tIfElse.Execute(os.Stdout, nil)
}
上のデモコードを通してif-else
文が相当簡単であることがわかりました。使用に際してとても簡単にテンプレートコードの中に集約されます。
注意:ifの中では条件判断を使用することができません。例えば、Mail=="[email protected]"のような判断は誤りです。ifの中ではbool値のみ使用できます。
pipelines
Unixユーザはpipe
についてよくご存知でしょう。ls | grep "beego"
のような文法はよく使われるものですよね。カレントディレクトリ以下のファイルをフィルターし、"beego"を含むデータを表示します。前の出力を後の入力にするという意味があります。最後に必要なデータを表示します。Go言語のテンプレートの最大のアドバンテージはデータのpipeをサポートしていることです。Go言語の中でいかなる{{}}
の中はすべてpipelinesデータです。例えば上で出力したemailにもしXSSインジェクションを引き起こす可能性があるとすると、どのように変換するのでしょうか?
{{. | html}}
emailが出力される場所では上のような方法で出力をすべてhtmlの実体に変換することができます。上のような方法は我々が普段書いているUnixの方法とまったく一緒ではないですか。とても簡単に操作することができます。他の関数をコールする場合も似たような方法となります。
テンプレート変数
ときどき、テンプレートを使っていてローカル変数を定義したい場合があります。操作の中でローカル変数を宣言することができます。例えばwith``range``if
プロセスではローカル変数を宣言します。この変数のスコープは{{end}}
の前です。Go言語で宣言されたローカル変数の形式は以下のとおりです:
$variable := pipeline
詳細な例は以下をご覧ください:
{{with $x := "output" | printf "%q"}}{{$x}}{{end}}
{{with $x := "output"}}{{printf "%q" $x}}{{end}}
{{with $x := "output"}}{{$x | printf "%q"}}{{end}}
テンプレート関数
テンプレートがオブジェクトのフィールドの値を出力する際、fmt
パッケージを採用してオブジェクトを文字列に変換します。しかしときどき我々はこうしたくはないときもあります。例えばスパムメールの送信者がウェブページから拾い集めてくる方法で我々のメールボックスへ情報を送信することを防止したいときがあります。@
をatに変換したいわけです。たとえば:astaxie at beego.me
のように。このような機能を実装したい場合は、自分で定義した関数でこの機能を作成する必要があります。
各テンプレート関数はいずれも単一の名前をもっていて、一つのGo関数と関係しています。以下の方法によって関係をもたせます。
type FuncMap map[string]interface{}
例えば、もしemail関数のテンプレート関数の名前をemailDeal
としたい場合は、これが関係するGo関数の名前はEmailDealWith
となります。下の方法でこの関数を登録することができます。
t = t.Funcs(template.FuncMap{"emailDeal": EmailDealWith})
EmailDealWith
という関数の引数と戻り値は以下のように定義します:
func EmailDealWith(args ...interface{}) string
以下の実装例を見てみましょう:
package main
import (
"fmt"
"html/template"
"os"
"strings"
)
type Friend struct {
Fname string
}
type Person struct {
UserName string
Emails []string
Friends []*Friend
}
func EmailDealWith(args ...interface{}) string {
ok := false
var s string
if len(args) == 1 {
s, ok = args[0].(string)
}
if !ok {
s = fmt.Sprint(args...)
}
// find the @ symbol
substrs := strings.Split(s, "@")
if len(substrs) != 2 {
return s
}
// replace the @ by " at "
return (substrs[0] + " at " + substrs[1])
}
func main() {
f1 := Friend{Fname: "minux.ma"}
f2 := Friend{Fname: "xushiwei"}
t := template.New("fieldname example")
t = t.Funcs(template.FuncMap{"emailDeal": EmailDealWith})
t, _ = t.Parse(`hello {{.UserName}}!
{{range .Emails}}
an emails {{.|emailDeal}}
{{end}}
{{with .Friends}}
{{range .}}
my friend name is {{.Fname}}
{{end}}
{{end}}
`)
p := Person{UserName: "Astaxie",
Emails: []string{"[email protected]", "[email protected]"},
Friends: []*Friend{&f1, &f2}}
t.Execute(os.Stdout, p)
}
上ではどのように自分で関数を定義するかお見せしました。実は、テンプレートパッケージの内部ではすでにビルトインの関数が実装されています。下のコードを切り取って自分のテンプレートパッケージの中にはりつけてください。
var builtins = FuncMap{
"and": and,
"call": call,
"html": HTMLEscaper,
"index": index,
"js": JSEscaper,
"len": length,
"not": not,
"or": or,
"print": fmt.Sprint,
"printf": fmt.Sprintf,
"println": fmt.Sprintln,
"urlquery": URLQueryEscaper,
}
Must操作
テンプレートパッケージにはMust
という関数があります。この作用はテンプレートが正しいか検査することです。例えば大括弧が揃っているか、コメントは正しく閉じられているか、変数は正しく書かれているかといったことです。ここでは例を一つお見せします。Mustを使ってテンプレートが正しいか判断します:
package main
import (
"fmt"
"text/template"
)
func main() {
tOk := template.New("first")
template.Must(tOk.Parse(" some static text /* and a comment */"))
fmt.Println("The first one parsed OK.")
template.Must(template.New("second").Parse("some static text {{ .Name }}"))
fmt.Println("The second one parsed OK.")
fmt.Println("The next one ought to fail.")
tErr := template.New("check parse error with Must")
template.Must(tErr.Parse(" some static text {{ .Name }"))
}
出力は以下の内容となります:
The first one parsed OK.
The second one parsed OK.
The next one ought to fail.
panic: template: check parse error with Must:1: unexpected "}" in command
ネストしたテンプレート
Webアプリケーションを作る時はテンプレートの一部が固定され不変である場合がよくあり、抜き出して独立した部分とすることができます。例えばブログのヘッダとフッタが固定で、変更があるのは真ん中のコンテンツの部分だけだとします。そのためheader
、content
、footer
の3つの部分として定義することができます。Go言語では以下のような文法によってこれを宣言します
{{define "サブテンプレートの名前"}}コンテンツ{{end}}
以下の方法によってコールします:
{{template "サブテンプレートの名前"}}
ここではどのようにしてネストしたテンプレートを使うかお見せします。3つのファイルを定義します。header.tmpl
、content.tmpl
、footer.tmpl
ファイルです。内容は以下のとおり
//header.tmpl
{{define "header"}}
<html>
<head>
<title>デモンストレーションの情報</title>
</head>
<body>
{{end}}
//content.tmpl
{{define "content"}}
{{template "header"}}
<h1>ネストのデモ</h1>
<ul>
<li>ネストではdefineを使用してサブテンプレートを定義します。</li>
<li>templateの使用をコール</li>
</ul>
{{template "footer"}}
{{end}}
//footer.tmpl
{{define "footer"}}
</body>
</html>
{{end}}
デモコードは以下の通り:
package main
import (
"fmt"
"os"
"text/template"
)
func main() {
s1, _ := template.ParseFiles("header.tmpl", "content.tmpl", "footer.tmpl")
s1.ExecuteTemplate(os.Stdout, "header", nil)
fmt.Println()
s1.ExecuteTemplate(os.Stdout, "content", nil)
fmt.Println()
s1.ExecuteTemplate(os.Stdout, "footer", nil)
fmt.Println()
s1.Execute(os.Stdout, nil)
}
上の例でtemplate.ParseFiles
を使ってすべてのネストしたテンプレートをテンプレートの中にパースできることがお分かりいただけたかと思います。各定義の{{define}}はすべて独立した一個のテンプレートで、互いに独立しています。並列して存在している関係です。内部ではmapのような関係(keyがテンプレートの名前で、valueがテンプレートの内容です。)が保存されています。その後ExecuteTemplate
を使って対応するサブテンプレートの内容を実行します。headerとfooterのどちらも互いに独立していることがわかります。どれもコンテンツを出力できます。contentの中でheaderとfooterのコンテンツがネストしているので、同時に3つの内容を出力できます。しかし、s1.Execute
を実行した時、何も出力されません。デフォルトではデフォルトのサブテンプレートが無いからです。そのため何も出力されません。
単一の集合のようなテンプレートは互いを知っています。もしあるテンプレートが複数の集合によって使用された場合、複数の集合の中で別々にパースされる必要があります。
まとめ
テンプレートに対する上記の詳細な紹介で、どのようにして動的なデータとテンプレートを融合させるかご理解いただけたかと思います:ループしたデータの出力、関数を定義、テンプレートのネスト等々。テンプレートの技術を応用することで、MVCパターンのVの処理を完成させることができます。以降の章ではどのようにMとCを処理するかご紹介します。